唐津市にある鏡山の山頂にある「蛇池」で、「大蛇を見た」という声が相次でいます。
しかし、その正体は「ニホンヒキガエル」のオタマジャクシの大群です。
ニホンヒキガエルには主に東日本に分布する「アズマヒキガエル」と、主に西日本に分布する「サツマヒキガエル」という二亜種に分かれいます。
このオタマジャクシはサツマヒキガエルの幼生と言う事になるのでしょうが、古くから人為的に分布が拡大かつ攪乱されており、本来の分布は不明だとか。
外見はよく似ていて、二亜種の区別は難しいそうです。
ニホンヒキガエル
ニホンヒキガエルのオタマジャクシ
ニホンヒキガエルの別名「ガマガエル」とも呼ばれたいます。
そうです、
「ガマの油」で有名なガマガエルですね。
「鏡山」も
「伊吹山」や
「筑波山」のように、「ガマの油売り」をやると面白そうですね。
伊吹山のガマの油
ガマの油売り
この話題になっている「蛇池」には伝説があります。
「万葉集」に伝えられたり、
能楽でも演じられる
「松浦佐用姫(まつらさよひめ)」伝説です。
松浦佐用姫は、現在の唐津市厳木町にいたとされる豪族の娘です。
537年、新羅に出征するためこの地を訪れた大伴狭手彦と佐用姫は恋仲なります。
出征のため別れる日に、佐用姫は鏡山の頂上から領巾(ひれ)を振りながら舟を見送ります。
しかし、別離に耐えられなくなり舟を追って呼子まで行き、加部島で七日七晩泣きはらした末に石になってしまいました。
鏡山山頂には佐用姫の銅像があります。
鏡山の佐用姫
加部島にある
田島神社の境内社・佐與姫神社は、佐用姫であったという石を祀って有ります。
田島神社の佐用姫
それにもう一つ佐用姫の生誕地
「厳木町」にも、高さ12メートルの巨大な像があります。
この像は道の駅「厳木」内に立っているのですが、実は電動仕掛けで約15分かけてゆっくり一回転するのです。
道の駅「厳木」の佐用姫
ここまでの話で、「あれっ」と思われる方もいるでしょうね。
そうです、「蛇池」の話が出て来ません。
実は佐用姫が石になった伝説とは別に、
「肥前国風土記」に収録されているのです。
狭手彦と領巾を振りながら別れた後に狭手彦によく似た男が家に通うようになり、これが沼の蛇の化身であると正体がわかると沼に引き入れられ死んでしまうという話です。
しかし、この話では「佐用姫」では無く「弟日姫子(おとひめこ)」となっており、後世に同一視された可能性もあります。
この蛇の化身の住んでいた沼が、「蛇池」と言う事になっています。
歴史のロマンですね。
◎佐賀新聞(2008/05/12)
大蛇の正体はカエルの子? 鏡山蛇池
唐津市にある鏡山の山頂池にこの時期「大蛇を見た」という声が相次ぐ。これが、実はオタマジャクシの大群。池は肥前風土記に「蛇池」と紹介されているだけに、伝説に重ねて驚く人が後を絶たない。
山頂で茶屋を経営する松尾邦久さん(54)によると、オタマジャクシはニホンヒキガエルの幼生。5年ほど前から毎年、温かくなると水が浅い岸辺に並ぶように集まってきて、集団で遊泳、長く連なるときは50メートルにも達するという。
池にはコイやフナが多くすむが、観光客が与える餌が豊富なため、卵の“天敵”がおらず、大発生につながったと松尾さんは考える。観光名所ならではの珍現象だが、松尾さんは「生態系が変わっていることなので、少し心配」と話す。
【写真】大きな頭を持つ蛇のように見えるオタマジャクシの大群(松尾邦久さん撮影)=唐津市の鏡山山頂池