閑甚日記inはまぞう

家族の無念ははかり知れません。

◎佐賀新聞(2007/11/26)
　「なぜ彼が死ななければ…」 関係者ら悔しさ募らす

　武雄市の入院患者射殺事件が急展開した。２５日未明、県警が逮捕状を取って、行方を追っていた男が福岡県内で逮捕された。事件発生から１８日目。地元では安堵（あんど）の声が広がる一方で、容疑者が抗争を繰り広げる指定暴力団組員で、逮捕された時、拳銃２丁を所持していたことに、亡くなった宮元洋さん＝同市山内町＝の友人らは「暴力団がのさばり、銃がまん延している。なぜ彼が死ななきゃいけなかったのか。本当に悔しい」。一般市民を巻き添えにした凶弾に、あらためて怒りを募らせた。

【遺族】
　暴力団関係者と人違いで射殺されたとみられる宮元洋さんの自宅は容疑者逮捕の一報を受け、午前９時すぎにはマスコミ関係者が集まった。インターホン越しに尋ねると、女性の声で「今は気持ちがまとまっていません。すみません」。

　午前１０時２０分ごろ、妻篤紀さんらが車で出かけた後は、親類とみられる男女が報道陣を避け、足早に家に出入りした。

　篤紀さんは午後３時半ごろ武雄署を通じ、「主人の事件が解決したわけではないですから、今後の捜査の行方を見守っていきたいと思います」とコメントを発表した。

【写真】事件現場となった篠田整形外科。２５日は休診日で人の出入りも少なかった＝武雄市朝日町甘久
【知人・友人】
　「わが子を亡くしたようでやりきれないが、少しはほっとした」。近くに住む６０代男性は、そう言いながら涙があふれた。長男と二男が宮元さんの幼なじみで、子どものころからよく知っており、「何で撃たれんといかんかったのか。真相を知りたい」と訴えた。

　宮元さんが所属していたラグビーチームの主将大石隆聖さん（３４）は「人違いで撃ったのなら、そのことをきちんと話してほしい」と沈んだ声。

　宮元さんの小中学校の同級生の男性（３５）は「２週間以上かかっていたので、逮捕の報道を聞いてまずほっとしている」と話した上で、人違い殺人の可能性がより強まり、「今は怒りとやりきれなさが、ごちゃ混ぜになっている」と悔しさを募らせた。

【事件現場】
　警備員２人が常駐する現場となった同市朝日町の篠田整形外科。見舞いに来た主婦（７１）は「友人の表情も（容疑者逮捕で）少し明るくなった」。入院中の夫に付き添う女性（８０）は「これで事件を忘れ、治療に専念してほしい」と、夫の健康状態を気遣った。

　テレビニュースで容疑者逮捕を知った冨永順也事務長は自宅で取材に応じ、「事件の真犯人かどうか、まだ分からない。安心して病院に来られるよう、当面は現状の警備体制を続けていきたい」と述べた。

【市民】
　事件後、現場付近は戸締まりを強化した家も多い。現場近くに住む男性（６３）は「ニュースで聞いたけど、ようやく逮捕か、長かったな、という感じ」。捜査がなかなか進展しい様子を報道で感じ取っていたといい、「とにかく迷宮入りせんでよかった」と明るい表情を見せた。

　一方、市内の商業施設で買い物中の女性（５３）は「やっと捕まったけど、やっぱり暴力団抗争なんでしょう？」と不安げな表情。「事件は解決しても武雄の町から暴力団がなくならない限り、不安は消えない」と語気を強めた。

【写真】事件現場となった篠田整形外科。２５日は休診日で人の出入りも少なかった＝武雄市朝日町甘久