つきたてのお餅を手で引き伸ばして、噛まずに一気に飲み込む「もちすすり」という一風変わった風習があります。
起源には諸説があり、戦国時代に出陣する際、時間がなかったため、ひと息にすすって(敵軍を飲み込む縁起もあり)出陣したことにさかのぼるともいわれています。
以前は、この「もちすすり」でもちをノドに詰まらせて救急車が出動することもあったそうです。「もちすすり」は、実は、素人にはマネのできない高度なテクニックを要する技なのです。
◎佐賀新聞(2007/12/27)
【師走2007】伝統のもちすすり、“のどごし”堪能
正月が近づき、米どころ杵島郡白石町では、もちつきの場で奇習「もちすすり」の姿が見られる。きねをつくなど力仕事を終えた人たちが出来たてのもちを手でちぎって一気に飲み込み、独特の食感を楽しんでいる。
もちすすりは同町に伝わる食文化で、安土桃山時代から400年以上の歴史があるという。つきたてのもちをそのまま湯の中に入れた後、細く伸ばしながら適量にちぎり、ごまじょうゆを付けて口にすすり込む。
機械でのもち作りや既製品を使うのが主流の中、同町では伝統的な“もち文化”を継承しようと各地域で保存グループを立ち上げている。活動する一人の久野潔さん(66)は「もちすすりは真夏の生ビールのようなのどごし。つきたてならではのおいしさを伝えていきたい」と話す。
【写真】もちすすりを披露する福富黒もち会と有明もち文化保存会のメンバーら=杵島郡白石町の有明スカイパークふれあい郷